AWSサーバーレスアプリケーションによるIIIF Image Serverの構築

本記事では、Awesome IIIFで紹介されている、AWSサーバーレスアプリケーションによるIIIF Image Serverの構築方法を紹介します。

 

github.com

 

なお、本記事の手続きにより、AWSのサービス利用料金が発生しますので、試される場合にはご注意ください。

 

 

想定読者

上記リポジトリでは、以下のように紹介されています。

 

準備

S3のバケット準備

IIIF で提供するソース画像を格納する Amazon S3 バケットを作成します。今回は、「serverless-iiif-s3-dd」というバケットを作成し、その中に「ezu」というディレクトリを作成しました。

 

tiled TIFFファイルの作成

今回は、国立国会図書館で公開されている以下の国絵図をサンプルデータとして用いました。

 

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1286201

 

JPG画像をダウンロードし、以下の変換コマンドを参考に、tiled TIFFファイルを作成します。

 

Using VIPS

vips tiffsave source_image.tif output_image.tif --tile --pyramid --compression jpeg --tile-width 256 --tile-height 256

Using ImageMagick

convert source_image.tif -define tiff:tile-geometry=256x256 -compress jpeg 'ptif:output_image.tif'

S3へのtiled TIFFファイルのアップロード

変換して得られたファイルを以下のようにアップロードします。

 

f:id:nakamura196:20220316141044p:plain

 

Image Serverの構築

セットアップ

まず、冒頭で紹介した、以下のリポジトリページにアクセスし、Quick Startにある「Deploy the Serverless Application」のリンクをクリックします。

 

https://github.com/samvera-labs/serverless-iiif

 

f:id:nakamura196:20220316134916p:plain

 

 

以下の画面に遷移後、アプリケーション名にユニークな名前を与えます。(ここがユニークでない場合、後述する過程でエラーが発生する場合があります。)

 

SourceBucketについては、先に作成したS3のバケット名を与えます。

 

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そして、画面下部の「このアプリがカスタム IAM ロールとリソースポリシーを作成することを承認します。」にチェックを入れて、デプロイを行います。

 

f:id:nakamura196:20220316135202p:plain

 

その後、以下の画面に遷移し、「デプロイ」タブで「ステータス」が「Create complete」となれば完了です。その後、画面右上の「CloudFormationスタック」をクリックします。

 

f:id:nakamura196:20220316141725p:plain

 

そして、「出力」タブの「Endpoint」に表示されるURLがエンドポイントのURLになります。

 

f:id:nakamura196:20220316141942p:plain

 

info.jsonの表示

先にアップロードした画像について、以下のURLからアクセスできます。注意点として、「ezu/1286201.tif」というパスの画像の場合、「/」を「%2F」として、拡張子を除いたURLを指定します。

 

https://d15p7qhfz6y7dm.cloudfront.net/iiif/2/ezu%2F1286201/info.json

 

jsonファイルが表示されれば、成功です。これまでの作業だけで、AWSのサーバレスアプリケーションとして、IIIF Image Serverを構築できました。

 

不具合への暫定対応

ただし、2022年3月17日時点において、このままではIIIF対応ビューア等で表示した際、エラーが発生します。以下のissueでも取り上げられています。

 

https://github.com/samvera-labs/serverless-iiif/issues/57

 

例えば、上記のURLを神崎正英氏が作成されているImage Annotatorに読み込むと、エラーが発生します。

 

https://www.kanzaki.com/works/2016/pub/image-annotator

 

f:id:nakamura196:20220316142635p:plain

 

f:id:nakamura196:20220317070612p:plain

 

原因は、@id が API Gateway のものになっている点かと思われます。

 

f:id:nakamura196:20220317070701p:plain

 

上述したissueで解決されることを待ちたいところですが、この問題に対する暫定的な対応として、AWS Lambdaで使用しているファイルの一部を修正します。

 

AWS Lambda

AWS Lambdaにアクセスし、今回作成されたアプリケーションを選択します。

 

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そして、当該アプリケーションページの下部の「リソース」から、IiifFunctionを選択します。

 

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そして、「helpers.js」の15行目を下図のように修正します。具体的には、先に生成されたCloudFrontのドメイン名「d15p7qhfz6y7dm.cloudfront.net」を設定し、「Deploy」ボタンを押します。

 

f:id:nakamura196:20220317071033p:plain

 

CloudFront

その後、CloudFrontのキャッシュを削除します。

 

f:id:nakamura196:20220316143253p:plain

 

例えば、以下のようにパスを指定します。

 

f:id:nakamura196:20220316143317p:plain

 

その結果、以下のように画像が表示されます。

 

f:id:nakamura196:20220316143050p:plain

 

具体的には、以下のように、info.json の「@id」の値が設定したドメインに修正されます。

 

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なお、メモリやタイムアウトの時間は、Lamba関数の設定画面で変更できます。

 

f:id:nakamura196:20220316145710p:plain

 

以下の記事などを参考に、上記までで作成したIIIF画像URLをOmeka Sに登録することで、GUIを用いたIIIFマニフェストファイルの作成を行うことができます。(もちろん、他のスクリプトやソフトウェアを使用して、または手動でマニフェストファイルを作成することも可能です。)

 

nakamura196.hatenablog.com

 

例えば、以下のように、Omeka SにIIIF画像を登録します。

 

f:id:nakamura196:20220317071734p:plain

 

その結果、以下のようなIIIFマニフェストが生成され、MiradorやUniversal Viewer等の他のIIIF対応ビューアでも表示することが可能になります。

 

https://shared.ldas.jp/omeka-s/iiif/1261/manifest

 

(参考)カスタムドメインの設定

上記までは、CloudFrontのURLをそのまま使用していたので、カスタムドメインの設定を行います。

 

Route 53

Route 53をお使いの方は、以下のような形でレコードを追加します。

 

f:id:nakamura196:20220316144554p:plain

 

CloudFront

また、CloudFrontにおいて、以下のような設定を行います。

 

f:id:nakamura196:20220316145047p:plain

 

上記の設定後、「最終変更日」がデプロイから変更されたら完了です。

 

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AWS Lambda

さらに、先ほど編集したLambda関数について、host に カスタムドメイン名を与えて、デプロイを行います。

 

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結果

上記の結果、例えば以下のURLから、カスタムドメインでのinfo.jsonを取得できます。@id についても、暫定措置によるものですが、カスタムドメインになっています。

 

https://img.hi-dd.com/iiif/2/ezu%2F1286201/info.json

 

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まとめ

本記事では、AWSを用いたIIIF Image Serverの構築方法について説明しました。従量課金の仕組みに注意する必要がありますが、簡易に、またCloudFront等の利用による高速な、IIIF Image Serverを構築できる点は大きな利点かと思います。このような仕組みを構築してくださった方々に感謝いたします。

 

なお、サイズが大きい画像の場合は表示に時間がかかる(ただし、2回目のアクセス以降はキャッシュによる高速な読み込みが可能)といった特性もありますので、利用される際は十分な検討をお勧めします。

 

IIIF Image Serverの構築を検討する上での一つの選択肢として、本記事がお役に立てば幸いです。