【機能開発】Omeka SのIIIF ServerモジュールにおけるImage APIを使用しない設定の追加

概要

Omeka SのIIIF Serverモジュールについて、Image APIを使用しない設定を追加する機能開発を行いました。これにより、レンタルサーバなどのリソースが限られた環境において、IIIFマニフェストなどの配信が容易となります。デジタルアーカイブシステムの持続性と利活用性の向上にむけて、本機能がお役にたてば幸いです。

 

背景

Omeka SのIIIF Serverモジュールは、Omeka Sに登録されたメタデータから、IIIFマニフェストファイルなどを生成するモジュールです。Omekaの様々なモジュールを開発されているDaniel-KM氏が主に開発されています。

 

github.com

 

画像については、Image Serverが必要となります。Awesome IIIFに挙げられているようなIIIF ServerをOmeka Sとは別に導入するか、Omeka SのImage Serverモジュールを使用することができます。後者については、Omeka Sのみで実現することができるため、LAMP環境が構築されたレンタルサーバを利用して、IIIF準拠の画像やマニフェストファイルなどの配信が可能となります。レンタルサーバはCPUやメモリといったリソースが限定されますが、メンテナンスコストが低い点が利点として挙げられます。

 

一方、レンタルサーバなどのリソースが限られた環境に、上述のOmeka SのImage Serverモジュールを導入するには課題があります。Image Serverモジュールが動的にタイル画像を配信する際、この処理に時間がかかり、タイル画像の表示が遅れる事象が確認されました。*1

 

解決策

 IIIFマニフェストにおいて、必ずしもIIIF Image APIに準拠する必要はなく、単純にJPEG画像等を参照することもできます。*2

 

www.kanzaki.com

 

そこで、レンタルサーバなどのリソースが限られた環境において、Omeka Sを用いたIIIFマニフェストの配信を行うための新たなオプションとして、このImage APIを使用せずに、Omeka Sに登録されたJPEG画像等をそのまま使用する設定をIIIF Serverモジュールに追加しました。以下のversion 3.6.4.3から本機能が利用できます。

 

github.com

 

具体的には、IIIF Serverモジュールの以下の設定画面で有効化できます。

 

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本モジュールは、東京大学工学・情報理工学図書館の工学史料キュレーションデータベースで使用されています。

 

curation.library.t.u-tokyo.ac.jp

 

先述した通り、本設定の有効化により、IIIFで利用できる機能が一部制限されるため、最善の手段ということではありませんが、リソースが限られたサーバ上でのIIIFマニフェストの配信手段のオプションとして、本機能がお役にたてば幸いです。

*1:なお、事前にタイル画像を生成するオプションも提供されています。これにより、リクエストがある度にタイル画像を生成する処理は不要となりますが、ディスク使用量の増加といったデメリットもあります。

*2:なお、これにより画像の動的なリサイズや回転、切り出し等ができなくなるため、機能が限定されるデメリットもあります。